2009年09月25日

スーパー哲学WARS 〜中世編〜

さあ今まさに始まろうとしているのは、天下一の哲学者を決定する、頂上決定戦の第二回です!実況は私岸本、解説はジョルジュさんです。
「西谷さんはどうなさったのです?」
彼は・・・いわゆる純粋形相になる旅へと出られました。あなたもそうならないよう気をつけてください。
「ミトラ=ヴァルナにかけてそうはなりません」
さて、今回は中世編ということでだいぶマニアックな顔ぶれですが、それぞれの選手が「神」という後ろ楯を持っています。この「神」が何らかの手段で打ち倒されても、本体が倒れても負けとなります。
「つまり第三部ということですね」
なんのことですかジョルジュさん。試合が始まりますよ。
選手の入場です!まずはテルトゥリアヌス選手!彼の神は理性で捉えきれない形を取っています。
「それってどんなですか」
クトゥルフっぽいのでしょう。
「めっちゃ邪教ですが・・・」
次にヒッポのアウグスティヌス選手!おおっと『マニ教・・・』と呟きながら暴れまわっている!これは「回心前」モードだ!
さらにカンタベリのアンセルムス選手!彼の神は想像する人によってその姿を変える『完全な神』です。
さて試合開始・・・おおっとアウグスティヌス選手、開始の合図を待たずにテルトゥリアヌス選手に踊りかかった!さすが回心前!ダーティです!
対するテルトゥリアヌス選手・・・逃げました!何か言っています。
『私は逃げた。これは恥ずべきことであるがゆえに、私は信じる』
「ただの変な人ですよそれじゃあ」
ともかく開始早々選手が脱落してしまいました。しかし新たな選手も続々と現れます。まずは偽ディオニシウス・アレオパギテス選手!
「何ですかその偽って」
ディオニシウス文書の著者がわからないからこうやって二次的な名前で呼んでいるのです。
「テントウムシダマシみたいなもんですか」
はい。彼はなんと、天使の軍勢を引き連れています!
この天使の軍勢はそれぞれが彼の指示に従い、ラッパを吹いたり祝福したりするのです!
「役に立たないじゃないですか」
何を!なんと天使の位階は三の三倍。数は三の三倍の三倍の三倍の・・・いるのです。
「三ばっかりじゃないですか」
これが彼の『トリアス』です。もちろん毛は三本、愛読書はサン・テグジュペリ、住んでいるのは三軒茶屋、好きな戦隊は太陽戦隊サンバルカンです。
「ライブマンも最初は三人なのに」
『ヒエラルキア』
おおっと偽ディオニシウス選手、聖なる秩序を構築し他の選手を下位のヒエラルキーに組み込んだ!これでは手が出せない!そして走り出したが・・・相手の前を通り過ぎててしまった!どういうことでしょう?
「歩数が三の倍数じゃない・・・」
ドストエフスキーですか。彼がまごまごしている隙にアンセルムス選手が活路を見い出します。
「私の神は完全である。ゆえに、私より上位などありえない」
「ははーっ!」
なんと上下関係に厳しい偽ディオニシウス選手、アンセルムス選手の神にひれ伏してしまった!これは失格です。
勝利したアンセルムス選手に、動けるようになったトマス・アクィナス選手挑みかかる!
まずはお互いの探りあいから。トマス選手が口火を切った!
「完全だから存在するってそんなのあるか」
「ばかめ、頭の中で考えられたということは、それを認めてしまっているということよ」
「ではもう一つ試してみよう。出でよ、『完全武装の神』!」
「何てことだ、完全な神より完全なものがあるなんて!ばかなあぁっ!」
アンセルムス選手、完全武装の神のRPG攻撃を受けて爆散しました!どちらも完全ですが、実力がある方が結局すごかったわけですね。
「この辺は次回ライプニッツが蒸し返してくれるでしょう」
狡智でアンセルムス選手を倒したトマス選手だが次の手は?
『アナロギア・エンティス(存在の類比)!』
おお!完全武装の神から『本質』を取り出し、それを『分有』することによってパワーアップ!別の戦場へと向かいます。
彼の向かう先ではスコトゥス・エリウゲナ選手とロスケリヌス選手が『普遍論争』を繰り広げています。
『個物に先立って』普遍を構築しようとするエリウゲナ選手に対し、ロスケリヌス選手は『普遍より先』に個物で攻撃しようとしています。お互い先手を取ろうとしているせいで膠着状態だ!
「卵が先か、コロンブスが先かみたいな話ですね」
何ですかそれは。ロスケリヌス選手、らちがあかないと考え、音波を自在に操る『フラートゥム・ウォキス(音声の流れ)』を使い攻撃します!耳を押さえて苦しむエリウゲナ選手!
しかしここにトマス選手が現れ、エリウゲナ選手を手助けします。
『普遍は個物の中にある』
「ウボァ!」
驚くべきことです!ロスケリヌス選手の内部から普遍が飛び出し、彼の腹を突き破りました!まるでエイリアン!
「あー肉片がここにも」
消滅したロスケリヌス選手!しかしここに尺八の音とともに新たな選手が!坊主頭に着流し姿、まるで座頭市だ!誰なんだ!
「名札がついてます。なになに・・・ウィリアム」
なるほど、オッカムのウィリアム選手です!名前にこだわる彼らしい!
ウィリアム選手、手にした仕込み杖『オッカムの剃刀』でトマス選手とエリウゲナ選手を真っ二つ!
「またつまらぬものを増やしてしまった」
存在を増やすことに否定的な彼ならではの発言です!
そして次の犠牲者を探すと思いきや・・・ウィリアム選手本物の剃刀を取り出すとスタジアムの端で倒れていたプラトン選手の髭を剃り始めました!
「まだいたんですかプラトン」
彼はいつまでも生き残るのです。ニーチェが言ってました。
さらにスタジアムにはニコラウス・クザーヌス選手が登場し、偽デュオニシウス選手から受け継いだ秘技を発動します!
『否定神学!』
出ました『否定神学』です!さあ何を否定するのか!?
「私は昼にも夜にも、武器によっても素手によっても倒されない」
おおっと敗北を否定したぁ!これでは無敵か!?
「ちなみに今はもう夕暮れ時ですよね。夕飯食べなきゃ」
誰かと同じことを言わないでください。ところで、戦闘に参加せずタバコを吸っていたアウグスティヌス選手ですが、彼の神に「お前何してんだよ!」と叱られ回心したもようです。
回心後は三位一体の信仰力をぶつける「トリニティブラスター」を得意とします。
「うぐわぁぁ!」
ニコラウス・クザーヌス選手トリニティブラスターをまともに喰らって吹っ飛んだあ!
どうやら否定が足りなかったようです。武器でないものは想定していなかったか。ニコラウス・クザーヌス選手ここでリタイア!
「まるでマクベスですね」
むしろナムチと言ったらどうですかジョルジュさん。インドはご専門でしょう。
戦いは佳境に入って参りました。次々と新たな選手が現れ、激闘を繰り広げています。
アルベルトゥス・マグヌスもいる、ボナヴェントゥラもいる、ドゥンス・スコトゥス、ガンのヘンリクス、そしてマイスター・エックハルト選手も見られます。
「こりゃ終わりそうにないですねぇ」
おおっと、その呟きを受けたのか、呼んでもいないのにマルティン・ルターが95ヶ条の抗議文をスタジアムの壁に張りながら現れました!迷惑です!
さらにウィクリフ、フス、カルヴァンまでもが控えています!競技を止めにきたのでしょうか?ルターが口を開きます。
「お前達、何を争っているのだ!キリストの教えは一つのはず!意見を対立させ分裂するなど愚かなことだ!」
これに対して、各選手一斉に「お前が言うな!」とブーイング。結局混乱を拡大しただけでした。
「お前おかしい、異端!」
「そこは違う、ヤコブだろ」
「デーミウルゴース!」
もう滅茶苦茶だ!火刑大好きトルケマダのトマスも頭に二本の松明を差して乱入!
「A CHI CHI A CHI 燃えてるんだろうか♪」
燃えてますよ!もはや収拾がつきません!哲学と神学の区別も不能!
「こうして光と光の戦いは未来永劫続くのであった・・・」
え、ちょっとジョルジュさん!これで終わり!?
この記事へのコメント
これおもしろすぎです。出場者をとことんわかっているだけでなく、演出が絶妙。
アウグスティヌスの回心前モード・・・しびれました。
Posted by プロクロス at 2009年11月19日 10:49
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