2009年09月15日

スーパー哲学WARS 〜古代編〜

さあ今まさに始まろうとしているのは、天下一の哲学者を決定する、頂上決定戦です!実況は私岸本、解説は西谷でお送りします。
「よろしくお願いします」
ルールは人数時間無制限のデスマッチ、最後まで立っていた選手の勝ち!場所は哲学発祥の地、ここミレトスのスタジアムからお送りします。
「ずいぶん乱暴なルールですねぇ」
いいんです。さてまずは選手の入場です。おおっとぉ!スタジアムの水溜まりが一ヶ所に集まり、人の形を形成していく!彼こそミレトスのタレス選手です!
「万物は水、ですからねぇ」
そして今スタジアムに等身大のスクリーンが現れました!それは無数の数字を映しています!その数字が次第に集まっていき現れるのは・・・ピュタゴラス選手だ!
「電送人間かって」
その他大勢の選手が登場しました。ここで試合開始!
早速タレス選手、水を滴らせながらヘラクレイトス選手に襲いかかります!対するヘラクレイトスが叫んだ!
『万物は流転する』
おおっと!その言葉通りタレス選手は転び、そのまま流されていってしまったぁ!
「水だけに、流転に弱いんでしょう」
一方では、デモクリトス選手が圧倒的な強さを見せております。出た!必殺技だ!
「原子分解!」
豪華な衣装のエンペドクレス選手、原子レベルに分解され消滅してしまいました。強い!強すぎる!
さあ次の犠牲者を探すデモクリトス選手!狙ったのはピュタゴラス選手だ!
「原子分解!」
おっとしかしピュタゴラス選手意に介していないぞ?なぜだ?何と頭のディスプレイに数字が現れています。その数は23・・・これはもしや素数!これは分解できない!
「原子分解と素因数分解をかけてるんでしょう」
しかしデモクリトス選手ひるまず、ピュタゴラス選手の胸のタブレットに指で正方形を描くと、対角線を引いたァ!こっこれは、無理数です!
「1.41421356237309・・・」
ピュタゴラス選手計算しきれず、ついに彼の体内のコンピューターが爆発してしまいました!
「本当に数で出来てたんですね、彼」
勝ち誇るデモクリトス!しかし突然彼は倒れ、ピクリともしなくなってしまいました!同時にあのヘラクレイトス選手も!これはもしやアナクシマンドロス選手の『ト・アペイロン(無限定なもの)』!
「で、結局それは何なんですか」
何でもありなんです。さてここで反則的な技が出てしまった!選手が次々とわけもわからず倒れていきます。立っているのはパルメニデス選手!ト・アペイロンが襲いかかるその時!彼は叫んだ!
『在るものはあり、無いものはない』
なんと!無いものだったト・アペイロンは消滅し、それと同化していたアナクシマンドロス選手も消えました!
「見えないから分かりませんがね」
そこへ、棍棒を手にしたアナクサゴラス選手が突撃!
「オレは在るぞぉぉぉぉ!」
しかしパルメニデス選手の背後から現れたエレアのゼノン選手が技を使います!
アキレスと亀!』
信じられない!パルメニデス選手は歩いているのにアナクサゴラス選手追いつけない!そこで追い打ち!
『飛矢不動!』
ついにアナクサゴラス選手動けなくなってしまいました!
「最初からそれを使えばいいのに」
身動きの取れない彼にゼノン選手が止めを刺します!
『競技場!』
なんと、単位時間だったはずのアナクサゴラス選手が真っ二つに割られてしまいました!
「ここんとこ少しわかりづらいですねぇ」
しかし彼の栄光も長くは続かない!そこへ新たに現れたゴルギアス選手を筆頭とする総勢50人のソフィスト軍団、やみくもに突進するとエレア派の二人を踏み潰してしまいました!プロタゴラス選手とトラシュマコス選手が勝ちどきをあげます。
『われわれが万物の尺度である』『勝てば官軍』
が、彼らは軍団に混じっていたソクラテス選手の説得によりアポリアーに陥り、全員帰ってしまいました。
「彼が一番ソフィストな気がしますねぇ」
ここからは少数の戦いです。ソフィスト軍団を全滅させたソクラテス選手に対し、満を持してスタジアムの東門から太陽を背にしたプラトン選手が現れました!
「そう言えばまだ朝ごはん食べてませんでしたねぇ」
西谷さんあとにしてください。プラトン選手は豪華にも二頭立ての馬車に乗っています。片方は黒、片方は白い馬だ!
ところが黒い馬の方が暴れだしてそのまま反対側の壁に激突してしまったぁ!
「欲望的部分を制御できなかったのでしょう」
しかしプラトン選手しぶとく立ち上がります。ここで師弟対決実現か!?
プラトン選手、三角形のイデアを無数に発生させて投げ付けます!危うしソクラテス!
『無知の知』
どうやらソクラテス選手、イデアを知らなかったようです!これでは効果がない!
さらにソクラテス選手にダイモーンが乗り移った!これで通常の三倍の速さだ!対するプラトン選手は?
『洞窟の比喩』
おおっと洞窟にこもってしまった!ソクラテス選手手が出せない!
「そういう設定ですからねぇ」
戦闘は膠着状態に陥りました。プラトン選手は引きこもり、ソクラテス選手はいつもの癖でポケーッとしています。
ここで戦況に変化が!スタジアムの端に落ちていた木の実があっという間に巨木へと成長すると、歩き出しました!アリストテレス選手です!
「可能態から現実態へと変化したのでしょうねぇ」
まるで指輪物語だ!彼はプラトン選手の洞窟を破壊して生き埋めにするとソクラテス選手へ向かいました!
「プラトンは鎖に繋がれてましたからねぇ」
にもかかわらずプラトン選手、瓦礫の中から登場!プラトンしぶとい!そして彼が『アナムネーシス(想起)!』と叫ぶとノコギリが現れました。何をするつもりでしょう?
『制作物モデル』
なんとプラトン選手アリストテレス選手を切り刻むと材木にし、そして机を作ってしまった!
「これでは机が形相になりますから、これ以上進化できませんねぇ」
悔しそうなアリストテレス選手!さらにプラトン選手はソクラテス選手にノコギリで斬りかかります!
『ソクラテスの弁明』
おっとソクラテス選手降参だ!弁明をしますが通じません!
『逃げれば不正に不正を重ねることになる』
ソクラテス選手逃げない!そのままノコギリで両断されてしまいました!
「ひどい弟子ですねぇ」
プラトン選手、このままアリストテレス選手を切り刻んで勝負を終わらせるのか?
ここでサモス島の第二会場の報告が入ってきました。それによると、ここではピュロン、エピクロス派の選手、ストア派の選手が出場しているのですが、お互い
『エポケー』
『アタラクシア』
『アパテイア』
と放心しあって勝負にならないそうです。以上、第二会場の情報でした。
話を戻してプラトン選手、机に近づく!対するアリストテレス選手は何か呟いているぞ?
『目的因:敵殲滅、作用因:気合・・・』
アリストテレス選手、机を気合で突き破って登場した!その首は四本!倒れたタレス、ヘラクレイトス、アナクサゴラス、エンペドクレスの首をわがものとしている!まさに形而上学的存在!
「ガンダルヴァみたいですねぇ」
さあここに第二の師弟対決が幕を切って落とされた!他方プラトン選手も哲人王へとバージョンアップ!詩人を粛清してゆく!
「迷惑ですねぇ」
ここでついに本大会トリを務める人物、プロティノス選手が『一者』
を伴って登場だ!
プロティノス選手強い!攻撃をしようとしても
『帰還』
で一者と合体してしまうし、彼らが油断すると
『流出』
で一者から現れて奇襲をかける!プラトン、アリストテレス両選手はたちまち地に倒れ伏す!プロティノス選手優勝か!?
おおっとぉ!ここで番狂わせだ!プロティノス選手、一者と『合一』してしまい元に戻れない!さらに一者はどこかへ行ってしまう!
『上方へ』
一者!どこへ行くんだ!一者ぁぁぁぁっ!!

・・・というわけで一者とともにプロティノス選手は消え、スタジアムに立っているものは誰もいなくなりました。解説の西谷さん?
「ギリシャだけに、デウス・エクス・マキナですかね。ハッハッハッ」
おまえも質料にしてやろうか。・・・というわけで第一回天下一哲学者決定戦は勝者なしと相成りました。中継は実況の岸本と解説の、
『エポケー』
おまえもアトムにしてやろうか。
「西谷でした」
みなさん、次回をお楽しみに!
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