2009年04月03日

In Extremoの音楽世界

今回は、日本ではほとんど知られていないドイツの中世ロックバンドIn Extremoのドイツ語詞の訳を作ってみた。
彼らはドイツ圏でもっとも注目したい七人組で、マルクトザックプファイフェというバグパイプのような笛とエレキギター、ベース、ドラムを組み合わせた独特の演奏と、ボーカルのバンド内ではDas letzte Einhorn(最後のユニコーン)と呼ばれるミヒャエルの渋い声を特徴とする。
何よりすごいのは歌詞で、ドイツ語は半分以下、残りは古スウェーデン語やら古ポルトガル語やらラテン語やら。カルミナ・ブラーナからの作品も多いのでオルフのやつを知っている人は馴染み深いだろう。
差し当たってもっとも有名な曲、19世紀の詩人ルートヴィヒ・ウーラントの詩による「Spielmannsfluch(吟遊詩人の呪い)」から訳していこう。

Spielmannsfluch
吟遊詩人の呪い

 昔々あるところに王様がおりまして 土地も物も豊かで
 玉座に暗鬱に 恐ろしい顔で座っておりました
 彼の考えることは恐怖であり 彼のまなざしは憤怒で
 彼の言葉は災いであり 彼の書くものそれは血でした

 ある日彼のお城に 高貴な吟遊詩人の親子がやって来ました
 一人は黒髪 もう一人は白髪でした
 灰色の詩人は若者に言いました 「息子よ 準備をするのだ
 素晴らしい歌を奏でよう たくさんのメロディーを響かせよう!」

 *雨が降る 血の雨が降る
  雨が降る 詩人の呪いが降る

 二人の詩人は大きな円柱の間で演奏します
 玉座には王と王妃がおり
 王は血まみれの北欧の主のように華麗で
 王妃は太陽の輝きのように美しいのでした

 彼らは春を 愛を 聖なる歌を歌います
 王妃は哀愁のうちに泣き崩れ しかし喜びに溢れておりました
 「貴様らは我が民を惑わすのか 我が妻を欲するのか?」
 王は激怒して叫びました その体中を震わせて

 *繰り返し

 王の剣がきらめいて 若者の胸を貫き
 輝く歌の代わりに 血がほとばしりました
 若者は師匠の腕の中で 力なくあえいでいます
 老人は悲しみから叫び その声は広間を震わせました

 「呪われし人殺しよ そなた詩人の呪いを浴びよ
  すべての戦は無駄となり 血によって汚されよ
  王の名は歌われず 伝記にもならぬ
  埋もれ忘れ去られる これこそが詩人の呪いよ」

 *繰り返し


この詩は最初は呪いのわりに小さなことだなと理解できなかったのだが、これはつまり権力および暴力に対し言論の力で反抗する、という立場を表した詩なのである。だいぶR指定なところがいかにもメタル系好みとも言えるが。
次に同アルバム「Vererht und Angespien(尊敬され吐き捨てられる)」よりIch Kenne Allesを。この幾分かコミカルな詩はフランスの詩人フランシス・ヴィヨンのものである。

Ich Kenne Alles
私は何でも知っている

 古い魚はもう いい臭いはしない
 辛い時に人は 楽しかったことを忘れる
 グミの木が汗をかくのは 根の病気である
 その母と再婚すると 娘は悲しみをこぼす
 私はローマを知っている その力を
 私は夜中に訪れる 夢を知っている 
 私は何でも知っている 点から線まで
 ただわからないのは 私のことだけ

 すべてのベールの後ろに 敬虔さがあるわけではない
 坊主はみんな 修道服を着ているというだけだ
 召使のように 主人はあらねばならない
 四角形は荷車になるが 車輪にはならない
 私は愚か者を知っている その崩れた顔を
 私はすべての 悲しみの重さを知っている
 私は何でも知っている 点から線まで
 ただわからないのは 私のことだけ

 茨だけではない 薔薇も刺すのだ
 忍び足の者 神とも小声で話す
 翼は風を掴むが 葉はさにあらず
 私は吝嗇家を知っている その歩き方を
 私はすべてを奪う 死を知っている
 私は衣服に合う 襟を知っている
 私は何でも知っている 点から線まで
 ただわからないのは 私のことだけ

トリビア的な豆知識の羅列である。当時の感覚がよく現れているのがおかしい。よくこういった詩が見つけられたものだ。
次にアルバムSünder Ohne Zügel(手綱なしの罪人)より表題曲、Lebensbeichteを。

Lebensbeichte
人生の懺悔

 沸きたて 我が荒ぶる心よ
 怒りの苦しみの中で
 軽き存在である私など
 空気のように消えねばならぬ
 船頭なくして 我が船は進む
 鏡のような海を
 誰も我に枷をはめることはできず
 かんぬきをかけることもできず
 私のような者に試してみたところで
 手綱なしの罪人とわかるのみだ

 心は 本当の私を表し
 嵐は 常にどこかへ連れて行く
 うわべは嘘をつく もはや故郷へは帰らず
 堅い枷 それなら私は一人

 飲み屋であるとき 自ずから
 死んだように崩れ落ちる
 杯にはまだ
 私の顔が映る
 若さにまかせ 私は遊び回る
 悪癖にまみれたやり口で
 天使の合唱がそこで
 私に祝福を与える
 神よ この大酒飲みを罰せよ
 彼の罪の故に

 心は 本当の私を表し
 嵐は 常にどこかへ連れて行く
 うわべは嘘をつく もはや故郷へは帰らず
 堅い枷 それなら私は一人

なんだかあまり内容がないが、曲のほうは憂愁に満ちた渋いものとなっている。
さて次はアルバムSieben(7)よりSegel Setzen。

Segel Setzen
帆を揚げろ

 月が その光を失い
 太陽が おまえをもはや暖めない時
 小人が 巨人となり
 世界が 古き英雄を夢見る時
 影が 長い足を伸ばし
 憎しみが おまえの息を詰まらせる時
 言葉が 心の奥深くで燃え
 正気をもはや保てずと感じる時

 ならば俺と 旅に出よう
 ならば俺と 遠くへ行こう
 おまえの夢とともに 連れて行け
 歳月が過ぎ去る前に

 日が 長くなり
 蜘蛛が 巣を作りだした時
 すべての言葉が 言い尽くされた時
 それは逃げ去る時なのだ
 恨みの声が 大きさを増し
 誤った音色が 芸術となり
 臆病者が 偶像となる時
 その時ここに我らの居場所はない

 ならば俺と 旅に出よう
 ならば俺と 遠くへ行こう
 おまえの夢とともに 連れて行け
 歳月が過ぎ去る前に

 帆を揚げよう
 ここから逃げ出そう
 おまえを失いたくない
 連れ去ってくれてかまわない

 連れて行け おまえの夢とともに

 帆を揚げよう
 ここから逃げ出そう
 おまえを失いたくない
 連れ去ってくれてかまわない

どうにも後ろ向きな感じであるが、彼らのオリジナル詞は比較的その傾向にある。そういうのを選択しているというのもあるのだが。
ではアルバムMein Rasend Herz(我が荒れ狂う心)よりMacht Und Dummheitを訳してみよう。この詞はなかなかどうして、難解である。

Macht Und Dummheit
力と愚かさ

 この世界に来て すでに長い
 どんな立場も 気に入っている
 王はむさぼり食い 乞食は飢える
 売春婦は 天国の前で待ち構える

 愚か者として私は 嘲りと不和の種を蒔き
 僧侶として私は 救済を望んできた
 この脚をはるか遠くまで運んできた
 聞け 私の言うことを聞くがよい

 決して
 私は決して 永遠とはならぬ
 決して
 愚かさは 私の処刑人にはならぬ

 私は様々な 人間を知っている
 小さいのも偉大なのも 若いのも年老いたのも
 天国では 彼ら未熟者が裁く
 従順さを 灼熱が掻き立てる

 力と嘘が 真実を押しのける所
 愚かさがしばしば 第一歩をなす
 地獄こそが 楽園である
 年月を重ねた 私の言うことを聞くがよい

 決して
 私は決して 永遠とはならぬ
 決して
 愚かさは 私の処刑人にはならぬ

 愚鈍が 玉座のひじ掛けを暖め
 その矢は 弦にかけられる
 発射の準備 私へ腕を伸ばし
 私の高慢を呼び起こす そんな真似をする

 射手は 汗をたらし震え
 ある指示が 彼を待たせる
 目を閉じると 彼はそのままで 
 太陽の輝きが 心を貫き通す

 決して
 私は決して 永遠とはならぬ
 決して
 愚かさは 私の処刑人にはならぬ

 決して 決して
 私は不滅とならないだろう

最後の部分の主語が不明瞭なのだが、たぶんこうであると思える。どういう状況かは想像力が考えることだ。
最新のアルバムSängerkrieg(シンガーウォーズ)から数曲見てみよう。このアルバムでは古詩からの引用も少なく、未知の言語もスペイン語くらいなのだが、それでもよく聞いてみると印象深いものも多かったので、そんな理由もありたくさん訳してみた。

Frei zu Sein
自由であれ

 俺には王冠は必要ないし
 城も 宝石もいらない
 俺の住んでいるところはいつも
 俺にとっての故郷となる
 俺はならず者だが 自由なんだ
 そんな贅沢はみんな 俺のそばを通り過ぎて行った

 *自由であることには 必要なことは少ない
  自由なやつだけが 王であるんだ
  恥も知らずに 厚かましい泥棒は奪う
  なぜなら彼は 自らの幸福の鍛え手だから

 他のやつが夢見ることを
 俺は夜に奪っていこう
 俺の歩き方は 婚礼の白馬のよう
 恐れを知らぬ王
 傭兵たちに守られた
 自分だけの神が 俺の天に座る

 *繰り返し
 
 一つの卵は 他のには似ていない
 多くの人が 確信している
 ならず者が七人 同時に音楽を作る
 人は自らのやり方で 眠りにつく

Tanz Mit Mir
俺と踊ろう

 あまりに多くの 重荷を背負っている
 その重さが俺を 地面へ引き倒す
 良い日も 悪い日のよう
 背中がこすれて 傷となる
 世界は穏やかにあり 俺は踊り続ける
 毎日の匂いが 鼻についてうんざりだからだ
 階段を二段飛ばしで進め
 奈落へ続く階段を

 でも俺はそんな行いを 後悔はしない
 たとえそのために 代償を払うとしても
 ただ一度生きろ 俺は待てない
 終わりの時まで まっすぐで立っていたいんだ
 俺は立ち上がる そして再び倒れる
 ずる賢くならず ただ年を取るだけ
 そして自らの 体を壊す
 すでに一度 壊れている体を

 *来いよ 俺と踊ろう 人生のただ中で
  誰かが俺を 寂しいと思ってくれるその場所でさ

 荷物は重く 心を突き刺す
 顔には 汗が吹き出る
 そうやって俺は生きてゆく 苦しみとともに
 終わりなどは 信じない
 俺は立ち上がる そして再び倒れる
 ずる賢くならず ただ年を取るだけ
 そして自らの 体を壊す
 すでに一度 壊れている体を

 *繰り返し×2

 来いよ 俺と踊ろう 朝の光が差すまで
 嵐が 太陽と交わるその場所で
 来いよ 俺と踊ろう 人生のただ中で
 誰かが俺を 寂しいと思ってくれるその場所でさ

Mein liebster Feind
俺の愛すべき敵

 俺の鏡の姿はむき出しで ありのままだ
 しっかりと光は その皺を映し出す
 俺には力が そして憤怒も欠けている
 一撃で その連中をばらばらにするには
 だがすべての傷が 俺に残り
 過ぎ去った日々を 思い出させる
 すべての刺し傷 切り傷が
 俺の心に傷跡を残す

 次のやつはどいつなんだ?
 俺の獲物に触れ
 頭から冠を引きずりおろすやつは?
 俺より速いと思っている やつは誰だ?
 次の石は おまえの首筋に当たる
 俺は一人では 絞首台に架からない

 だがこの獣は あまりに大きく強く
 俺の日を ぶちこわした
 俺は策略と 悪知恵で
 待ち伏せ場所を 用意してやろう
 力があるのは誰で 勇気があるのはどいつだ?
 その証拠を持ってくるやつはどこにいる?
 俺は簡単な獲物にはならない
 たとえハゲタカが頭上を飛び回っていたとしても

 次のやつはどいつなんだ?
 俺の獲物に触れ
 頭から冠を引きずりおろすやつは?
 俺より速いと思っている やつは誰だ?
 次の石は おまえの首筋に当たる
 俺は一人では 絞首台に架からない

Auf's Leben
人生を飲もう

 おまえの若さでもって 俺は飲みたい
 ただ一杯だけ 忘れさせてくれる一杯を
 別れの時にも 始まりのことを考えていたい
 記憶が 薄れてしまうまで

 おまえの無邪気さでもって 生きていきたい
 今この場所を そしていつまでも
 お前の鼓動は 俺の脈を震えさせる
 そして次の白昼夢が すでに俺を運び去っている

 この一杯を飲んでくれ
 俺たちは 人生を飲み干す
 俺のグラスを受け取ってくれ
 おまえの分を俺にくれたのだから

 おまえの眼で 世界を見たい
 遠くへ連れて行ってくれるまなざしで
 もし俺たちが離れ離れになるなら
 もはや後に残るものは 何もない

 おまえの確信を頼りに 生きていたい
 もはやこんな歳になってしまったと 知っているが
 ひとかけら おまえから奪わなければ
 おまえを選んだという 喜びのために

 この一杯を飲んでくれ
 俺たちは 人生を飲み干す
 俺のグラスを受け取ってくれ
 おまえの分を俺にくれたのだから
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/116671709

この記事へのトラックバック